母のこと。
私は父を胃がんで亡くしました。
幼い子供を抱えた母の苦労は
並大抵ではなかったでしょう。
まだ私が小学校の低学年だった時、
真夜中に洗面器一杯血を吐いて
救急車で運ばれていった父の顔を
はっきりと思い出せます。
消化器系のがんは食べられない、
そう言った母の言葉は体験からくる
本物の言葉です。
まだ30代の終わりだった若い父。
お腹を開けた時には
もう、手遅れだったと聞いています。
思い出せば
抗がん剤の治療さえやっていないでしょう。
髪は亡くなるまで一度も抜けませんでしたから。
聞けば
どなたにも
病気を抱えたご家族がいて
家族の数と同じ数だけ
それぞれの苦労があるんですね。
泣こうが笑おうが
何があろうと明日はやってきます。
何食わぬ顔をして
お日様はいつものように
昇ります。